2010年3月26日金曜日

顧問弁護士(法律顧問)が扱うテーマ:消費者契約法

顧問弁護士(法律顧問)がよく問い合わせを受けるテーマをまとめます。

今日は、消費者契約法についてです。消費者契約法は、消費者と事業者の情報力・交渉力の格差を前提とし、消費者の利益擁護を図ることを目的として、平成12年4月制定、平成13年4月に施行されました。


消費者契約法のポイント

(1) この法律は消費者と事業者が結んだ契約全てが対象です。

たとえば、宗教法人については、法人にあたるため、事業者となります。また、教祖及び信者が行う宗教活動については、「事業=一定の目的をもってなされる同種の行為の反復継続的遂行」の概念にあたれば事業となります。その上で、宗教法人等が行う宗教活動については、民法上の「契約」の概念に該当しない宗教活動については「消費者契約」にはあたりません。なお、宗教活動に伴う喜捨や布施が、宗教法人に対する「贈与」(すなわち、契約)に当たるかどうかは、民法の解釈によって定まります。

もうひとつ例として、いわゆるモニター商法を考えてみます。モニター商法とは、一般的にはモニター(商品やサービスを業者から特別の条件で購入する代わりに、商品やサービスを実際に使用した上で得た情報を業者に報告する者)になってもらうことを条件に商品やサービスを特別に提供すると思わせて売りつける商法であると考えられています。この場合、モニター商法を行う業者については、一般的に本法の「事業者」に該当し、モニターについては、モニターが行うモニタリング自体には「事業」性がないと考えられる場合には、当該モニタリングのために商品やサービスを購入する契約は「事業のため」の契約ではないと考えられます。したがって、そのような場合のモニターは本法における「消費者」に該当し、本法の適用範囲に入ると考えられます。


(2) 契約を勧誘されている時に事業者に不適切な行為があった場合、契約を取り消せます。

不適切な行為というのは、具体的には、、、

・嘘を言っていた。
・確実に儲かるとの儲け話をした。
・うまい話を言っておいて、都合の悪いことを知っていて隠していた。
・自宅や職場に押しかけて「帰ってくれ」等と言ったにも関わらず帰らなかった。
・事業者から呼び出されたりして「帰りたい」等と言ったにも関わらず帰してくれなかった。

などが挙げられています。


たとえば、ヒールの硬い革靴が欲しくて靴屋で探していたとします。店員が「この靴はイタリア製なのでヒールが硬いですよ。」と勧めたので購入したが、実際に道路を歩いてみると、以前自分が履いていたものに比べてさほど硬いと思えなかった場合はどうでしょうか。この場合、「ヒールが硬い」と告げることは、主観的な評価であって、客観的な事実により真実又は真正であるか否かを判断することができない内容であるので、「事実と異なること」の告知の対象にはなりません。

もうひとつ例を考えてみます。「当センターの派遣する家庭教師は東大生です。」と勧誘されたが、当該家庭教師が東京大学以外の東京○○大学の学生だったとします。この場合、「東大生」という略称は一般に東京大学の学生を意味するものであり、東京大学以外の東京○○大学の学生を「東大生」と告げることは、重要事項(家庭教師の出身大学)について、「事実と異なることを告げること」にあたるので、第4条第1項第1号の要件に該当し、取消しが認められると考えられます。


(3) 契約書に消費者の権利を不当に害する条項は無かったことになります。

そのような条項としては、具体的には、、、


・事業者が損害賠償をすることを全部免除しているもの
・事業者が損害賠償を何があっても一部に制限しているもの
・法外なキャンセル料を要求するもの
・遅延損害金で年利14.6%を超えて取ろうとするもの
・その他消費者の利益を一方的に害するもの

などが挙げられています。



会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、顧問弁護士にご相談ください。

個人の方で、以上の点につき相談したいことがあれば、弁護士にご相談ください。


なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。また、最近は、企業のコンプライアンスの重要性、すなわち、法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことの重要性が高まっています。労働者から未払いの残業代を請求されるというサービス残業の問題を始め、企業にある日突然法律トラブルが生じることがあります。日頃からコンプライアンスを徹底するためにも、顧問弁護士を検討することをお勧めします。