2009年12月2日水曜日

顧問弁護士(法律顧問)によくある質問・・・休職

顧問弁護士(法律顧問)としてよく受ける問いについてまとめていきます。今回は、起訴休職についてです。

ある労働者について労務に従事させるのが不可能または不適当な事由が生じた場合に、使用者がその労働者に対し、労働契約関係は維持しながら労務への従事を免除しまたは禁止することを休職といいます。

そして、起訴休職というのは、起訴された従業員を就業させることによる企業の社会的信用の低下や企業活動の円滑な遂行への障害を防ぐためにとられる措置です。

この起訴休職について、全日本空輸事件(機長が傷害罪容疑で逮捕・起訴され無罪判決を受けた。会社は機長に対し、起訴を受けたことを理由に無給の休職に付していたという事案)において、東京地裁は、以下のように判断しました。

被告の就業規則三七条五号及び三九条二項は、従業員が起訴されたときは休職させる場合があり、賃金はその都度決定する旨を定めている。このような起訴休職制度の趣旨は,刑事事件で起訴された従業員をそのまま就業させると、職務内容又は公訴事実の内容によっては、職場秩序が乱されたり、企業の社会的信用が害され、また、当該従業員の労務の継続的な給付や企業活動の円滑な遂行に障害が生ずることを避けることにあると認められる。したがって、従業員が起訴された事実のみで、形式的に起訴休職の規定の適用が認められるものではなく、職務の性質、公訴事実の内容、身柄拘束の有無など諸般の事情に照らし、起訴された従業員が引き続き就労することにより、被告の対外的信用が失墜し、又は職場秩序の維持に障害が生ずるおそれがあるか、あるいは当該従業員の労務の継続的な給付や企業活動の円滑な遂行に障害が生ずるおそれがある場合でなければならず、また、休職によって被る従業員の不利益の程度が、起訴の対象となった事実が確定的に認められた場合に行われる可能性のある懲戒処分の内容と比較して明らかに均衡を欠く場合ではないことを要するというべきである。
本件休職処分は、原告が引き続き就労することにより、被告の対外的信用の失墜、職場秩序維持に対する障害及び労務の継続的な給付についての障害を生ずるおそれがあると認められないにもかかわらずされたものとして、無効なものというべきである。
前記のとおり、被告が原告に対してした本件休職処分は無効というべきであるから、原告は、労務を提供していたのに、被告がその受領を拒否したため就労不能となったもので、民法五三六条二項により賃金請求権を失わない。

ご不明な点がありましたら、貴社の顧問弁護士(法律顧問)にお問い合わせください。

また、労働者の方で、法律問題でお悩みの方も、弁護士にご相談ください。



なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。また、最近は、企業のコンプライアンスの重要性、すなわち、法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことの重要性が高まっています。労働者から未払いの残業代を請求されるというサービス残業の問題を始め、企業にある日突然法律トラブルが生じることがあります。日頃からコンプライアンスを徹底するためにも、顧問弁護士を検討することをお勧めします。