2010年11月15日月曜日

過失相殺(交通事故)

被告乙山太郎(以下「被告太郎」という。)が運転する原動機付自転車(以下「被告車」という。)が、信号機による交通整理の行われていない交差点を横断歩行中の原告に衝突し、原告が受傷した後記交通事故(以下「本件交通事故」という。)につき、原告が、被告太郎に対し民法七〇九条に基づき、被告乙山次郎(以下「被告次郎」といい、被告太郎と合わせて「被告乙山ら」ともいう。)に対し自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条本文に基づく損害賠償を求めた事案の裁判例です。被告太郎は、原告が横断のため中央分離帯付近に佇立していることを認識しながら、その動静に対する注意を怠り、漫然と時速約四〇キロメートルで走行した過失により、本件交通事故を惹起したものであるから、本件交通事故による損害について、民法七〇九条に基づき損害賠償責任を負う。一方、本件交差点の南北道路は、前述のとおり東西道路に比べ、明らかに広い道路ということができ、本件交通事故当時の車両交通量も閑散であったとはいえない。また、本件交差点付近の南北道路は直線道路であって、横断歩行をしようとして同道路内に立入り、中央分離帯付近に佇立した原告からは、同道路を走行する車両の発見はごく容易であったと考えられるし、原告は、本件交通事故当時六九歳であったとはいえ、後述のとおり特に判断能力が低下していたとは認めることができない。そうすると、原告が、横断歩道の設置されていない本件交差点において、被告車を見落として南北道路を横断したという過失も軽微とはいえない。以上を総合勘案すれば、本件交通事故における被告太郎と原告との過失割合は、八対二とすることを相当と認める。
BLOG

2010年8月1日日曜日

元請人が倒産した場合に下請人は築造部分の所有権を主張できるか

顧問弁護士(法律顧問)が扱うテーマをブログにまとめています。

今日は、元請人が倒産した場合に、一括下請人は築造部分の所有権を主張できるか、という問題を紹介します。

この問題について、最高裁は、以下のように判断しました(判決文の引用)。

建物建築工事請負契約において、注文者と元請負人との間に、契約が中途で解除された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の約定がある場合に、当該契約が中途で解除されたときは、元請負人から一括して当該工事を請け負った下請負人が自ら材料を提供して出来形部分を築造したとしても、注文者と下請負人との間に格別の合意があるなど特段の事情のない限り、当該出来形部分の所有権は注文者に帰属すると解するのが相当である。けだし、建物建築工事を元請負人から一括下請負の形で請け負う下請契約は、その性質上元請契約の存在及び内容を前提とし、元請負人の債務を履行することを目的とするものであるから、下請負人は、注文者との関係では、元請負人のいわば履行補助者的立場に立つものにすぎず、注文者のためにする建物建築工事に関して、元請負人と異なる権利関係を主張し得る立場にはないからである。
 これを本件についてみるのに、前示の事実関係によれば、注文者である上告人と元請負人である住吉建設との間においては、契約が中途で解除された場合には出来形部分の所有権は上告人に帰属する旨の約定があるところ、住吉建設倒産後、本件元請契約は上告人によって解除されたものであり、他方、被上告人は、住吉建設から一括下請負の形で本件建物の建築工事を請け負ったものであるが、右の一括下請負には上告人の承諾がないばかりでなく、上告人は、住吉建設が倒産するまで本件下請契約の存在さえ知らなかったものであり、しかも本件において上告人は、契約解除前に本件元請代金のうち出来形部分である本件建前価格の二倍以上に相当する金員を住吉建設に支払っているというのであるから、上告人への所有権の帰属を肯定すべき事情こそあれ、これを否定する特段の事情を窺う余地のないことが明らかである。してみると、たとえ被上告人が自ら材料を提供して出来形部分である本件建前を築造したとしても、上告人は、本件元請契約における出来形部分の所有権帰属に関する約定により、右契約が解除された時点で本件建前の所有権を取得したものというべきである。


会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、顧問弁護士にご相談ください。個人の方で、以上の点につき相談したいことがあれば、弁護士にご相談ください。

なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(不払いの残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。最近は、企業のコンプライアンスの重要性、すなわち、法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことの重要性が高まっています。労働者から未払いの残業代を請求されるというサービス残業の問題を始め、企業にある日突然法律トラブルが生じることがあります。日頃からコンプライアンスを徹底するためにも、顧問弁護士を検討することをお勧めします。

2010年7月29日木曜日

顧問弁護士(法律顧問)がよく問い合わせを受けるテーマ:休職

顧問弁護士(法律顧問)がよく問い合わせを受けるテーマをまとめます。

今日は、休職についてです。

裁判例は、傷害事件に関する訴追を理由として無給の休職処分を受けた労働者からの会社に対する当該処分の無効確認・賃金支払請求について、一部認容しました。以下、判決文の引用です。

被告の就業規則三七条五号及び三九条二項は、従業員が起訴されたときは休職させる場合があり、賃金はその都度決定する旨を定めている。このような起訴休職制度の趣旨は,刑事事件で起訴された従業員をそのまま就業させると、職務内容又は公訴事実の内容によっては、職場秩序が乱されたり、企業の社会的信用が害され、また、当該従業員の労務の継続的な給付や企業活動の円滑な遂行に障害が生ずることを避けることにあると認められる。したがって、従業員が起訴された事実のみで、形式的に起訴休職の規定の適用が認められるものではなく、職務の性質、公訴事実の内容、身柄拘束の有無など諸般の事情に照らし、起訴された従業員が引き続き就労することにより、被告の対外的信用が失墜し、又は職場秩序の維持に障害が生ずるおそれがあるか、あるいは当該従業員の労務の継続的な給付や企業活動の円滑な遂行に障害が生ずるおそれがある場合でなければならず、また、休職によって被る従業員の不利益の程度が、起訴の対象となった事実が確定的に認められた場合に行われる可能性のある懲戒処分の内容と比較して明らかに均衡を欠く場合ではないことを要するというべきである。
本件休職処分は、原告が引き続き就労することにより、被告の対外的信用の失墜、職場秩序維持に対する障害及び労務の継続的な給付についての障害を生ずるおそれがあると認められないにもかかわらずされたものとして、無効なものというべきである


会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、顧問弁護士にご相談ください。

個人の方で、以上の点につき相談したいことがあれば、弁護士にご相談ください。

なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。最近は、企業のコンプライアンスの重要性、すなわち、法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことの重要性が高まっています。労働者から未払いの残業代を請求されるというサービス残業の問題を始め、企業にある日突然法律トラブルが生じることがあります。日頃からコンプライアンスを徹底するためにも、早目に顧問弁護士を検討することをお勧めします。

2010年6月4日金曜日

法律顧問・顧問弁護士が扱うテーマ:出張・外勤拒否の場合に企業に賃金支払義務があるか

顧問弁護士(法律顧問)が日々扱うテーマをまとめています。

今回は、出張・外勤拒否の場合に企業に賃金支払義務があるかについてです。

出張・外勤拒否の場合に企業に賃金支払義務があるかについて、最高裁(水道機工事件。組合の外勤・出張拒否闘争中に出張・外勤を命ずる業務命令を発し賃金全額をカットしたのに対し、組合員らが内勤業務に従事したことを理由に、賃金の支払を求めた事案)は、以下のように判断しています。

原審の適法に確定したところによると、(1)被上告人は、昭和四八年二月五日から一四日までの間に、上告人らに対し、文書により個別に、就業すべき日、時間、場所及び業務内容を指定して出張・外勤を命ずる業務命令(以下「本件業務命令」という。)を発したが、上告人らは、いずれも、右指定された時間、被上告人会社に出勤し、その分担に応じ、書類、設計図等の作成、出張・外勤業務に付随する事務、器具の研究、工具等の保守点検等の内勤業務に従事し、本件業務命令に対応する労務を提供しなかった、(2)上告人らの所属する労働組合は、これに先立ち、同年一月三〇日、被上告人に対し、同年二月一日以降外勤・出張拒否闘争及び電話応待拒否闘争に入る旨を通告していたものであり、右闘争は、一定期間労務の提供を全面的に拒否するのではなく、組合員が通当行う業務のうち右の種類の業務についてのみ労務の提供を拒否するというものであって、上告人らが本件業務命令による出張・外勤を拒否して内勤業務に従事したのは、右通告に基づき争議行為としてしたものである、(3)被上告人会社においては、出張・外勤の必要が生じた場合、従業員が自己の担当業務の状況等を考慮し、注文主と打合せの上、あらかじめ日時を内定し,上司の許可ないし命令を得るとか、上司から出張・外勤を命ぜられた場合にも、出張日程等については上司と協議の上これを決定するなど、従業員の意思が相当に尊重されていたが、このような取扱いは、被上告人が業務命令を発する手続を円滑にするため事実上許容されていたにすぎない、というのである。
 原審は、右事実関係に基づき、本件業務命令は、組合の争議行為を否定するような性質のものではないし、従来の慣行を無視したものとして信義則に反するというものでもなく、上告人らが、本件業務命令によって指定された時間、その指定された出張・外勤業務に従事せず内勤業務に従事したことは、債務の本旨に従った労務の提供をしたものとはいえず、また、被上告人は、本件業務命令を事前に発したことにより、その指定した時間については出張・外勤以外の労務の受領をあらかじめ拒絶したものと解すべきであるから、上告人らが提供した内勤業務についての労務を受領したものとはいえず、したがって、被上告人は、上告人らに対し右の時間に対応する賃金の支払義務を負うものではないと判断している。原審の右判断は、前記事実関係に照らし正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。


会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、顧問弁護士にご相談ください。

従業員の方で、未払い残業代の問題ほか法律問題につき相談したいことがあれば、弁護士にご相談ください。

なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。最近は、企業のコンプライアンスの重要性、すなわち、法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことの重要性が高まっています。労働者から未払いの残業代を請求されるというサービス残業の問題を始め、企業にある日突然法律トラブルが生じることがあります。日頃からコンプライアンスを徹底するためにも、顧問弁護士を検討することをお勧めします。

2010年5月20日木曜日

残業代請求などの労務問題の基礎知識:パートタイム労働者

顧問弁護士(法律顧問)として問い合わせを受けることがあるテーマをメモしています。

今日は、パートタイム労働者についてです。

パートタイム労働者とは、フルタイム労働者の所定労働時間よりも少ない時間で働く労働者を意味し、いわゆる「アルバイト」「準職員」「嘱託社員」なども含みます。


法律上は、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」の2条において、「短時間労働者」として、「一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短い労働者」と定義されています。

よく間違えやすいのが、雇用期間の定めの有無で、パートタイム労働者かどうかが決まる、と誤解する方もいるのですが、そうではありません。パートタイム労働者には、雇用期間の定めがある人もない人もいます。

「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下「パートタイム労働法」といいます)のポイントは以下のとおりです。

まず、労働基準法においても、雇用の際に、労働条件(契約期間、就業時間、賃金など)を明示する義務が規定されていますが、パートタイム労働法6条は、明示すべき労働条件として、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」についても明示する義務を規定しています。

また、パートタイム労働法8条1項は、「事業主は、①業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者(以下「職務内容同一短時間労働者」という。)であって、②当該事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているもののうち、③当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの(以下「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」という。)については、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならない。」と規定しています。

さらに、上記の「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」とはいえない労働者についても、以下の義務が規定されています。

まず、パートタイム労働法9条は、パートタイム労働者の賃金について、①事業主は、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案し、その賃金(通勤手当、退職手当などは除く)を決定するように努めるべきこと、 ②事業主は、職務内容同一短時間労働者であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主に雇用される期間のうちの少なくとも一定の期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるものについては、当該変更が行われる期間においては、通常の労働者と同一の方法により賃金を決定するように努めるべきこと、を規定しています。

また、パートタイム労働法10条は、教育訓練実施措置の義務について、①事業主は、通常の労働者に対して実施する教育訓練であって、当該通常の労働者が従事する職務の遂行に必要な能力を付与するためのものについては、職務内容同一短時間労働者が既に当該職務に必要な能力を有している場合その他の厚生労働省令で定める場合を除き、職務内容同一短時間労働者に対しても、これを実施しなければならないこと、②事業主は、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力及び経験等に応じ、当該短時間労働者に対して教育訓練を実施するように努めるべきこと、を規定しています。

加えて、パートタイム労働法11条は、福利厚生に関して、事業主は、通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設であって、健康の保持又は業務の円滑な遂行に資するものとして厚生労働省令で定めるものについては、その雇用する短時間労働者に対しても、利用の機会を与えるように配慮しなければならないこと、パートタイム労働法12条は、事業主は、通常の労働者への転換を推進するため、その雇用する短時間労働者について、一定の措置を講じなければならないことを規定しています。



以上につき、ご不明な点がありましたら、顧問弁護士(法律顧問)にお尋ねください。

また、法律問題でお悩みの方は、弁護士にお問い合わせください。

最近は、企業のコンプライアンスの重要性、すなわち、法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことの重要性が高まっています。労働者から未払いの残業代を請求されるというサービス残業の問題を始め、企業にある日突然法律トラブルが生じることがあります。日頃からコンプライアンスを徹底するためにも、顧問弁護士を検討することをお勧めします。

2010年4月24日土曜日

残業代、サービス残業問題の検討

長時間労働を抑制するとともに、労働者の健康確保とワークライフバランスが取れた社会を実現することを目的に、4月1日に改正労働基準法が施行されました。

そこで、最近施行された新しい労働基準のポイントをまとめてみます。

新しい労働基準法では、残業代の計算に対する規定が大きく変わりました。

改正前は、時間外労働に対する賃金報酬の割増率は、時間数とは関係なく、一律25%でしたが、改正後は、60時間を超えた分については50%に引き上げられます。(なお、休日労働や深夜労働については従来どおりであり、それぞれ35%、25%の割増率のまま変更されません。)

また、残業代の一部を有給休暇として取得できる制度も新たに設けられます(ただ、当面、一定の従業員、資本金規模の企業に勤める従業員のみに適用されます。中小企業に関しては、現状は猶予期間とされ、3年後に改めて導入が検討されることになっています。)。

代替休暇制度は、従業員規模にかかわらず適用されます。

改正前は、日単位で取得せねばならなかった年次有給休暇を、事業所において労使協定が締結されることを条件に、1年に5日分を限度として時間単位で取得できるようになるのです。

これまで、まとまった休暇が取りづらく、有給休暇を消化できなかった労働者にとっては、より柔軟な休暇の取り方が可能となります。

その他、改正法では、すべての企業に対して、時間外労働の限度基準である1カ月45時間を超えた残業代の割増賃金率を25%以上にすること、および、月45時間以上の時間外労働を短縮することについての努力義務が課せられます。

不明な点は、貴社の顧問弁護士にお問い合わせください。

サービス残業、残業代の未払い不払いでお悩みの方、弁護士に相談してみてはどうでしょうか。

最近は、企業のコンプライアンスの重要性、すなわち、法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことの重要性が高まっています。労働者から未払いの残業代を請求されるというサービス残業の問題を始め、企業にある日突然法律トラブルが生じることがあります。日頃からコンプライアンスを徹底するためにも、顧問弁護士を検討することをお勧めします。

2010年3月26日金曜日

顧問弁護士(法律顧問)が扱うテーマ:消費者契約法

顧問弁護士(法律顧問)がよく問い合わせを受けるテーマをまとめます。

今日は、消費者契約法についてです。消費者契約法は、消費者と事業者の情報力・交渉力の格差を前提とし、消費者の利益擁護を図ることを目的として、平成12年4月制定、平成13年4月に施行されました。


消費者契約法のポイント

(1) この法律は消費者と事業者が結んだ契約全てが対象です。

たとえば、宗教法人については、法人にあたるため、事業者となります。また、教祖及び信者が行う宗教活動については、「事業=一定の目的をもってなされる同種の行為の反復継続的遂行」の概念にあたれば事業となります。その上で、宗教法人等が行う宗教活動については、民法上の「契約」の概念に該当しない宗教活動については「消費者契約」にはあたりません。なお、宗教活動に伴う喜捨や布施が、宗教法人に対する「贈与」(すなわち、契約)に当たるかどうかは、民法の解釈によって定まります。

もうひとつ例として、いわゆるモニター商法を考えてみます。モニター商法とは、一般的にはモニター(商品やサービスを業者から特別の条件で購入する代わりに、商品やサービスを実際に使用した上で得た情報を業者に報告する者)になってもらうことを条件に商品やサービスを特別に提供すると思わせて売りつける商法であると考えられています。この場合、モニター商法を行う業者については、一般的に本法の「事業者」に該当し、モニターについては、モニターが行うモニタリング自体には「事業」性がないと考えられる場合には、当該モニタリングのために商品やサービスを購入する契約は「事業のため」の契約ではないと考えられます。したがって、そのような場合のモニターは本法における「消費者」に該当し、本法の適用範囲に入ると考えられます。


(2) 契約を勧誘されている時に事業者に不適切な行為があった場合、契約を取り消せます。

不適切な行為というのは、具体的には、、、

・嘘を言っていた。
・確実に儲かるとの儲け話をした。
・うまい話を言っておいて、都合の悪いことを知っていて隠していた。
・自宅や職場に押しかけて「帰ってくれ」等と言ったにも関わらず帰らなかった。
・事業者から呼び出されたりして「帰りたい」等と言ったにも関わらず帰してくれなかった。

などが挙げられています。


たとえば、ヒールの硬い革靴が欲しくて靴屋で探していたとします。店員が「この靴はイタリア製なのでヒールが硬いですよ。」と勧めたので購入したが、実際に道路を歩いてみると、以前自分が履いていたものに比べてさほど硬いと思えなかった場合はどうでしょうか。この場合、「ヒールが硬い」と告げることは、主観的な評価であって、客観的な事実により真実又は真正であるか否かを判断することができない内容であるので、「事実と異なること」の告知の対象にはなりません。

もうひとつ例を考えてみます。「当センターの派遣する家庭教師は東大生です。」と勧誘されたが、当該家庭教師が東京大学以外の東京○○大学の学生だったとします。この場合、「東大生」という略称は一般に東京大学の学生を意味するものであり、東京大学以外の東京○○大学の学生を「東大生」と告げることは、重要事項(家庭教師の出身大学)について、「事実と異なることを告げること」にあたるので、第4条第1項第1号の要件に該当し、取消しが認められると考えられます。


(3) 契約書に消費者の権利を不当に害する条項は無かったことになります。

そのような条項としては、具体的には、、、


・事業者が損害賠償をすることを全部免除しているもの
・事業者が損害賠償を何があっても一部に制限しているもの
・法外なキャンセル料を要求するもの
・遅延損害金で年利14.6%を超えて取ろうとするもの
・その他消費者の利益を一方的に害するもの

などが挙げられています。



会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、顧問弁護士にご相談ください。

個人の方で、以上の点につき相談したいことがあれば、弁護士にご相談ください。


なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。また、最近は、企業のコンプライアンスの重要性、すなわち、法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことの重要性が高まっています。労働者から未払いの残業代を請求されるというサービス残業の問題を始め、企業にある日突然法律トラブルが生じることがあります。日頃からコンプライアンスを徹底するためにも、顧問弁護士を検討することをお勧めします。

2010年2月25日木曜日

顧問弁護士(法律顧問)が扱うテーマ:製造物責任法

顧問弁護士(法律顧問)が日々接するテーマをまとめています。

今回は、製造物責任法についてです。

製造物責任法は,製品の欠陥によって生命,身体又は財産に損害を被ったことを証明した場合に,被害者は製造会社などに対して損害賠償を求めることができる法律です。つまり,円滑かつ適切な被害救済に役立つ法律です。

具体的には,製造業者等が,自ら製造,加工,輸入又は一定の表示をし,引き渡した製造物の欠陥により他人の生命,身体又は財産を侵害したときは,過失の有無にかかわらず,これによって生じた損害を賠償する責任があることを定めています。また製造業者等の免責事由や期間の制限についても定めています。

製造業者,消費者がお互い自己責任の考え方も踏まえながら,製品の安全確保に向けて一層の努力を払い,安全で安心できる消費生活を実現することが目的です。

この法律では製造物を「製造又は加工された動産」と定義しています。一般的には,大量生産・大量消費される工業製品を中心とした,人為的な操作や処理がなされ,引き渡された動産を対象とします。ですから,不動産,未加工農林畜水産物,電気,ソフトウェアといったものは該当しないことになります。

また,この法律でいう「欠陥」というのは,当該製造物に関するいろいろな事情(判断要素)を総合的に考慮して,製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいいます。ですから,安全性にかかわらないような単なる品質上の不具合は,この法律の賠償責任の根拠とされる欠陥には当たらないわけです。なお,本法でいう「欠陥」に当たらないために損害賠償責任の対象にならない場合であっても,現行の民法に基づく瑕疵担保責任,債務不履行責任,不法行為責任などの要件を満たせば,被害者はそれぞれの責任に基づく損害賠償を請求することができます。

欠陥の有無の判断は,個々の製品や事案によって異なるものなので,それぞれのケースに応じて考慮される事情やその程度は異なり得ることになります。例えば,製品によっては,表示や取扱説明書中に,設計や製造によって完全に除去できないような危険について,それによる事故を回避するための指示や警告が適切に示されているかどうかも考慮されます。また,常識では考えられないような誤使用(異常な使用)によって事故が生じた場合には製品に欠陥は無かったと判断されることもあります。この法律では,このような考慮事情として,共通性,重要性,両当事者に中立的な表現ということを念頭に,「製造物の特性」,「通常予見される使用形態」及び「製造業者等が当該製造物を引き渡した時期」の3つを例示しています。

間違えやすいのですが,欠陥による被害が,その製造物自体の損害にとどまった場合であれば,この法律の対象になりません。このような損害については,従来どおり,現行の民法に基づく瑕疵担保責任や債務不履行責任等による救済が考えられます。この法律による損害賠償の請求権が認められるのは,製造物の欠陥によって,人の生命,身体に被害をもたらした場合や,欠陥のある製造物以外の財産に損害が発生したときです。

この法律に基づいて損害賠償を受けるためには,被害者が,1)製造物に欠陥が存在していたこと,2)損害が発生したこと,3)損害が製造物の欠陥により生じたことの3つの事実を明らかにすることが原則となります。なお,これらの認定に当たっては,個々の事案の内容,証拠の提出状況等によって,経験則,事実上の推定などを柔軟に活用することにより,事案に則した公平な被害者の立証負担の軽減が図られるものと考えられます。

損害賠償を求める場合の請求先としては,その製品の製造業者,輸入業者,製造物に氏名などを表示した事業者であり,単なる販売業者は原則として対象になりません。

なお,本法による損害賠償責任請求が認められない場合であっても,現行の民法に基づく瑕疵担保責任,債務不履行責任,不法行為責任などの要件を満たせば,被害者はそれぞれの責任に基づく損害賠償を請求することができます。



ご不明な点は、御社の顧問弁護士にご相談ください。

また、法律問題でお悩みがある方も、気軽に弁護士にご相談ください。



なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。また、最近は、企業のコンプライアンスの重要性、すなわち、法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことの重要性が高まっています。労働者から未払いの残業代を請求されるというサービス残業の問題を始め、企業にある日突然法律トラブルが生じることがあります。日頃からコンプライアンスを徹底するためにも、顧問弁護士を検討することをお勧めします。

2010年1月29日金曜日

顧問弁護士(法律顧問)が日々接するテーマ:貸金業法の改正

顧問弁護士(法律顧問)が日々接するテーマをまとめています。

今回のテーマは、貸金業法の改正についてです。

貸金業法は、消費者金融などの貸金業者や、貸金業者からの借入れについて定めている法律です。
近年、返済しきれないほどの借金を抱えてしまう「多重債務者」の増加が、深刻な社会問題(「多重債務問題」)となったことから、これを解決するため、平成18年、従来の法律が抜本的に改正され、この貸金業法がつくられました。

ポイントは、総量規制と上限金利の引き下げです。

まず、総量規制とは、借りることのできる額の総額に制限を設ける、新しい規制のことです。

この新しい規制は、平成22年6月18日から実施されています。

具体的には、貸金業者からの借入残高が年収の3分の1を超える場合、新規の借入れをすることができなくなります。ただし、すでに、年収の3分の1を超える借入残高があるからといって、その超えている部分についてすぐに返済を求められるわけではありません。

この総量規制が適用されるのは、貸金業者から個人が借入れを行う場合です。銀行からの借入れや法人名義での借入れは対象外です。

また、住宅ローンなど、一般に低金利で返済期間が長く、定型的である一部の貸付けについては、総量規制は適用されません。

また、借入れの際、基本的に、「年収を証明する書類」が必要となります。

「年収を証明する書類」としては、源泉徴収票や給与明細などがあります。

この「年収を証明する書類」を提出しないと、借りられなくなる場合があるので、注意してください。


次に、法律上の上限金利には、
① 利息制限法の上限金利(超過すると民事上無効):貸付額に応じ15%~20%② 出資法の上限金利(超過すると刑事罰):改正前は29.2%
の2つがあります。

これまで、貸金業者の場合、この出資法の上限金利と利息制限法の上限金利の間の金利帯でも、一定の要件を満たすと、有効となっていました。これが、いわゆる「グレーゾーン金利」です。

他方、金利負担の軽減という考え方から、今回の改正により、平成22年6月18日以降、出資法の上限金利が20%に引き下げられ、グレーゾーン金利が撤廃されます。これによって、上限金利は利息制限法の水準(貸付額に応じ15%~20%)となります。なお、利息制限法の上限金利を超える金利帯での貸付けは民事上無効で、行政処分の対象にもなります。出資法の上限金利を超える金利帯での貸付けは、刑事罰の対象です。

ご不明な点は、顧問弁護士(法律顧問)にご相談ください。

また、法律問題でお悩みがある方も、気軽に弁護士にご相談ください。


なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。また、最近は、企業のコンプライアンスの重要性、すなわち、法律や規則などのごく基本的なルールに従って活動を行うことの重要性が高まっています。労働者から未払いの残業代を請求されるというサービス残業の問題を始め、企業にある日突然法律トラブルが生じることがあります。日頃からコンプライアンスを徹底するためにも、顧問弁護士を検討することをお勧めします。