2009年2月23日月曜日

残業代請求(サービス残業)

今回は、サービス残業の残業代請求に係る裁判例を紹介しています(つづき)。

3 争点
(1)原告の顧客カードは,不正競争防止法2条1項4号の「営業秘密」に当たるか。
(2)被告が,上記顧客カードをリプル店から持ち出してこれを使用したことが,同号の不正取得行為に当たるか。
 また,被告が,ピノキオ店で理美容業に従事したことが,競業避止義務に違反するものとして,原告に対する不法行為を構成するか。
(3)損害額
(4)原告は,平成16年2月ころ,被告の基本給を減額するに当たり,原告との間で,同17年4月以降の基本給月額を43万4000円に復する旨合意していたか。
(5)被告の時間外給与の支払請求の可否
(原告の主張)
(1)顧客カードの営業秘密性について
 顧客カードには,顧客の氏名,住所,生年月日,電話番号,携帯電話のメールアドレス等の個人情報が多く記載されており,その裏面には,いつどのような理美容の作業を行ったか,金額はいくらだったかといった情報だけでなく,顧客のプライバシーに関わることまで記載されている。
 原告は,顧客カードの管理につき,顧客や出入りの業者等にも見られないよう厳重に管理し,従業員であっても,店外はもちろんスタッフルームへの持ち込みも禁じていた。したがって,顧客カードには秘密管理性が認められる。
 そして,顧客カードは,顧客との対応を円滑にし,また,営業活動においても利用されていたのであって,有用性も認められ(そうであるからこそ,被告も顧客カードを盗み去ったのである。),そこに記載された情報は,一般に非公知である。
(2)被告の顧客カードの持出し行為について
 被告が顧客カードを持ち出して,これを使用した行為は,不正競争防止法2条1項4号の「不正競争」に該当する。
 被告は,平成18年3月31日に原告を退社後,翌日からリプル店から約250メートルしか離れていないピノキオ店において,理美容椅子1台を借りて理美容業を開始した。その予約は,リプル店において勤務中に行っており,ピノキオ店の被告の顧客は,従前,リプル店の顧客であった者である。被告は,ピノキオ店において,リプル店から持ち出した顧客カードを利用して,顧客に電話し,顧客を自動車で迎えに行ったりしていたのであり,原告の顧客を無断でピノキオ店に移したということができる。被告は,顧客カードを無断で持ち去り,しかも,ピノキオ店に来た顧客について,来店日時及び料金等を記載していたのである。
 被告の上記行為は,不正競争防止法2条1項4号の不正競争行為に当たり、また,被告の競業行為は,不法行為を構成するというべきである。
 なお,被告は,顧客カードの持ち出しについては,リプル店の店長であったB(B)の了解を得ていた旨主張するが,Bは,被告から顧客カードの持出しについて話をされたことはなく,これを了解したということもない。そもそも,顧客カードは原告所有のものであるから,原告の代表取締役の甲野太郎(甲野)の了解を得る必要があるところ,甲野がこれを了解したことはない。 
(3)損害
 被告がリプル店の顧客を奪ったことにより,リプル店における売上げが減少したが,この売上げの減少は少なくとも1年間は続いた。
 被告は,平成18年4月以降,ピノキオ店において月額50万1468円の売上げを得ていたが,これは原告の1か月当たりの損害である。ただし,被告の貢献度及び顧客情報が時の経過とともに衰退すること等も考慮すると,当初の3か月は100パーセント,次の3か月は75パーセント,次の3か月は50パーセント,次の3か月は25パーセントとして損害額を算定するのが相当である。
 そうすると,原告の損害額は376万1010円となる(50万1468円×3か月×(1+0.75+0.5+0.25)=376万1010円)。
 そして,上記損害額の1割相当の弁護士費用も被告の上記不法行為と因果関係のある損害ということができるから,損害額の合計は413万7111円となる。
(4)昇給合意の有無
 原告は,売上げが減少していたため,平成16年4月以降の被告の基本給を減額することとし,被告の了解を得て減額したのであって,その際,被告に対し,1年以内に従前の基本給に戻す旨合意したことなどない。
(5)時間外給与請求の可否
 被告の,リプル店における休憩は約3ないし4時間程度であり,その実労働時間は6ないし7時間であったから,時間外労働(残業)はない。仮に時間外労働(残業)があったとしても,被告は,総店長の地位にあつたから,労働基準法(労基法)41条の適用はなく,また,被告は,他の店長の1.5倍の給与の支給を受け,かつ,店長手当として3万円の支給を受けていたから,時間外給与分も上記給与に含まれていたのである。

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