2009年3月13日金曜日

未払いの残業代請求

今回は、サービス残業の残業代請求に係る裁判例を紹介しています(つづき)。

(被告の反論)
(1)顧客カードの営業秘密性について
 顧客カードは,リプル店のカウンターの下の棚に無造作に置かれており,施錠されたケースに入っていたわけでもない。このカウンター内に顧客が立ち入るのを遮るものはなく,厳重に保管されていたとか,盗まれないようにしていたなどという状況にはなかった。顧客カードは,カウンターの下ではなく,顧客の鞄などの付近に輪ゴムで束ね,無造作に置かれていたにすぎない。現に,顧客の中には,自分の上着や鞄を取るためにカウンター内に立ち入る者もいた。
(2)被告の顧客カードの持出し行為について
 被告は,リプル店の店長であったBの了解を得て顧客カードを持ち出した。また,リプル店の他の従業員もこれを了解していた。原告は,被告が原告を退社後3か月間は顧客カードの持出しについて問題とすることがなかったのも,上記事情によるのである。被告の顧客カードの持出し行為には実質的な違法性がない。
 被告と原告との間で,被告がどこで次の仕事をするかについての特約はなく,被告が,自らの技術を信頼する顧客の利益を図り,顧客が来店しやすい場所で理美容の仕事をするのを非難されるいわれはない。被告に競業を避止する義務を負わせる法的根拠などない。
(3)損害
 被告は,顧客とは,顧客カードとは関係なく,連絡先を教え合っていたのであって,被告の顧客カードの持出し行為と原告の損害との間には因果関係がない。
(4)昇給合意の有無
 原告は,平成16年2月ころ,被告の基本給を減額するに当たり,被告との間で,同17年4月以降の基本給月額を,39万0600円から43万4000円に復する旨の昇給合意をしていた。
 ところが,原告は,同年4月以降も基本給を元の基本給43万4000円に戻さなかった。
 したがって,被告は,原告に対し,同年4月から同18年3月までの未払給与合計52万0800円(43万4000円と39万0600円の差額4万3400円の12か月分)の支払を求める。
(5)時間外給与請求の可否
 被告は,1日当たり1時間30分,1か月当たり37時間30分の時間外労働(残業)をし,加えて,少なくとも平成16年11月以降,毎月2回,原則として水曜日の夜,営業終了後の午後9時から最低でも2時間,店長会議に出席していた。
 被告の1時間当たりの給与額は1953円であったから,時間外給与は1時間当たり2441円(1.25倍,労基法37条1項),深夜割増給与は1時間当たり2929円(1.5倍,労基法37条3項)となるから,被告が原告に請求し得る時間外賃金・深夜割増賃金(残業代)額は下記のとおりであり,その合計額は173万8709円である。

       記

〔1〕通常の勤務日における時間外賃金
(2441円×37.5時間×17か月=155万6129円)
〔2〕月2回の店長会議に伴う時間外賃金
(2441円×2回×17か月=8万2994円)
(2929円×2回×17か月=9万9586円)

なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談交渉刑事事件多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題オフィスや店舗の敷金返還(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。