2009年11月10日火曜日

顧問弁護士(法律顧問)に多い質問・・・事業再生ADR

私的整理ガイドラインと事業再生ADRの手続をまとめます。

1.私的整理ガイドラインにおける私的整理手続の流れ


①事前相談私的整理ガイドラインによれば、債務者会社がメインバンクに私的整理の申し入れをすることによって手続がスタートする。ただ、多くの事案において、メインバンクが専門家にガイドライン手続による再建の可否を相談し、その後債務者会社の社長らを説得するという流れを経ている。
②一時停止の通知主要債権者と債務者会社の連名で、対象債権者(○億円以上、など少額債権者を除外することもある)に対して通知を発する。FAXで送信され、受信した対象債権者は、債権の取立てや保全の強化を一切停止する。
③第1回債権者会議一時停止の通知から2週間以内に開催される。第一回債権者会議では、一時停止の追認・延長が決議される。また、専門化アドバイザーが選任される。DIPファイナンス(対象債権より優先的に弁済)の供与・条件について決議されることもある。
④専門家アドバイザーによる調査報告財務DD、法務DDの報告書を作成し、対象債権者に配布し、説明会を行う。
⑤第2回債権者会議対象債権者全員によって再建計画案に同意するか否かの表明がされる。私的整理の成立には、対象債権者全員の同意が必要であるから、一行でも反対があると私的整理は不成立となり、民事再生、会社更生などの法的手続をとることが必要となる。


この手続きにおいては、専門家アドバイザーは、公正な判断をすることに重きを置き、債権者の説得や同意を促すための債権者の調整をしてこなかった。この点において、後述の事業再生ADRの手続実施者がADRの担い手として債権者調整を行うのと大きな違いがある。


2.事業再生ADRの特色


対象債権者を「金融機関債権者に限定」したり、「○億円以上の金融債権者」とするなど、債権者を選択・限定して申立てをすることができる。裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR法)によれば、この紛争解決手続は、認証ADRが「紛争の当事者双方からの依頼を受けて」行うため、対象債権者が同意しなければ、手続を進めることはできない。

また、対象債権者全員の同意がなければ成立せず、法的手続(特定調停、民事再生、会社更生)の申立てに進むこととなる。


3.事業再生ADRの手続の流れ


①手続利用の申請債務者会社が事業再生ADRに手続利用を申請する(債権者の依頼は、債権者会議で確認する)
②一時停止の通知事業再生ADRは債務者会社との連名で、対象債権者に対して「一時停止の通知」を発する(私的整理ガイドラインと異なり、主要債権者の名は表に出ない)。これにより、債権回収、担保設定、法的手続の開始申立てが禁止される。この一時停止の通知があっても期限の利益喪失事由には該当しない。
③概要説明のための債権者会議2週間以内にこの債権者会議を開催せねばならない。ここでは、債務者が資産・負債の状況と事業再生計画の概要が説明され、また、対象債権者が事業再生ADRに紛争解決を依頼する意思があることも確認される。そして、手続実施者を選任し、一時停止期間を決定し、DIPファイナンス(既存債権より優先的に弁済)について決議される。
④計画案協議のための債権者会議私的整理ガイドラインにおける専門家アドバイザーによる調査報告書の説明会に該当するものである。手続実施者によって、事業再生計画案が公正・妥当で経済合理性を有するものであるかについて意見が述べられる。
⑤決議のための債権者会議事業再生計画案の決議は、対象債権者全員の書面による合意の意思表示によりなされる。

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